大学の取組事例

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初年次を対象としたアカデミック・ライティング教育/首都大学東京 大学教育センター助教 伏木田 稚子(ふしきだ わかこ)様

都内のX大学(私立大学)では、2013年度より3期にわたり、経営学部の1年生約300名を対象に論証型レポートの作成を目的とした初年次教育が展開されてきました。ここでは、コーディネーターとして昨年度より本プロジェクトを統括した経験を踏まえ、5つの観点から活動内容の特徴を紹介いたします。 まず、運営面については、①コーディネーター・丸善株式会社・当該大学の教職員の3者間連携、②講師・TA(他大学の大学院生等)・SA(当該大学の4年生)によるチームティーチングを柱とすることで、X大生に適した授業実践の形を関係者全員で模索しています。例えば全体の方針や実施の状況を共有するために、キックオフ、中間、最終報告会を3者間で行うほか、授業後には毎週必ずチーム内外で実践の工夫や課題を話し合う機会を設けています。

次いで本授業の目標ですが、1年生のうちにスタディスキルや論理的思考を身に着けてほしいという願いから、「レポート課題、ゼミのレジュメ、卒業論文など大学の授業で求められる学術的文章の基本を理解し、自ら立てた課題について解決を図るために考えながら書けるようになる」ことを目指してきました。具体的には、(a) 学術的文章を読む(レジュメの作成と発表)、(b) 問いを立てる(テーマの選択と焦点化)、(c) 論拠を調べてまとめる(データベースを用いた文献の検索)、(d) レポートを書く(アウトラインの作成・文献の引用・執筆)という流れに即して、各段階をクリアしながら次に進むという方法をとっています。

その過程で特に重視したのは、③問いの生成と論拠の明示に焦点化したワークの導入、④講師、TA、SAによる個別サポート、⑤課題採点ルールの明確化とフィードバックといった実践面での工夫です。プロジェクトの2年目には、「書きたいことがない」という興味の無さや「長い文章を書いたことがない」という不安感などから、学生がレポート作成に苦手意識を抱く傾向が確認され、さらにはレポートの核となる問いの生成でつまずいてしまい、結果として論拠をまとめる段階に十分な時間を割けない事態が見受けられました。そこで今年度は、文献輪読やTA・SAの個人体験を聞く中で多数の問いを生成し、吟味して良い問いを選ぶというワークを繰り返し行うことに加え、学生個人に具体的なコメントを返す中でこうした問題の解決を図っています。

その結果、「なぜ人は限定商品に惹かれるのか?」「なぜソーシャルゲームに課金してしまうのか?」「ディズニーリゾートで元を取るには?」のように、個人の興味・関心を専攻分野の話題に関連づけて論じようとする学生が多くみられるようになりました。また、文献(書籍・論文・新聞記事など)を引用して論拠を示した上で、問いに対する自分なりの答えを導く重要性も理解できていたことから、本プロジェクトは論証型レポートの作成にある程度の成果をもたらしたといえるでしょう。

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