丸善雄松堂

連載

2020年11月19日

春夏秋冬のあるくらし ―機械や工業材料に頼らない住まいの環境つくり―(第1回~第3回)

 

自然の営みに正面から向き合う全6回のシリーズ講座

「春夏秋冬のあるくらし ー機械や工業材料に頼らない住まいの環境つくりー」は、異常気象が生命の存続に影響を与える中で、我々の未来を見いだすために、自然と正面から向き合う、春夏秋冬のある暮らしを見直す全6回のシリーズ講座です。

当講座は、一級建築士である金田正夫先生を講師にお招きし、省エネではなく省資源を掲げ、自然環境と共にあるようなパッシブな住宅建築の在り方について「温熱」の視点からお話しいただき、人に暑さ寒さを感じさせる「気温」「放射熱」「湿気」「風」の4つの要素を科学的に理解するとともに、古くからある民家のノウハウを見直しながら現代住宅のあるべき姿を考えていきます。

〔第1回〕環境異変に向き合う 省エネ機器や工業材料は危機回避につながらない

第1回(2020年9月24日開催)は、「環境異変に向き合う 省エネ機器や工業材料は危機回避につながらない」をテーマに、まず導入として社会環境を振り返り、なぜ省エネではなく省資源の見方が大事なのかについてお話しいただきました。
人新生と呼ばれるこの時代においては、6度目の大絶滅や食糧危機、燃料枯渇をはじめ、さまざまな問題が一挙に顕在化してきており、多くの専門家が具体的なデータを根拠に警鐘を鳴らしています。講座の中では、日々メディアなどでも取り上げられている実例を通して種々の環境異変に目を向けるとともに、未だ危機回避に向けて根本的な対策を取ることができていない現代社会の状況に対して、住宅建築の観点から可能なアプローチが示されました。

〔第2回〕空気を暖めない熱エネルギー 現代の屋根は夏の受熱、冬の遮熱を生む

第2回(2020年10月18日開催)は、「空気を暖めない熱エネルギー 現代の屋根は夏の受熱、冬の遮熱を生む」をテーマにお話しいただきました。
人が暑さ寒さを感じるのに大きく影響をおよぼすのは太陽であり、太陽のエネルギーには紫外線や赤外線など、気温を高める以外にもさまざまな作用があります。このように学校で習ってきた自然の知識を改めて振り返り、「気温」「放射熱」「湿気」「風」の4つの要素を科学的に見ることで、それらが暑さ寒さをコントロールするために重要な要素であることを確認していきました。そのうえで、エアコンで気温の上げ下げをする現代の熱調節の仕組みへの疑問が投げかけられるとともに、韓国の伝統的な床暖房である「オンドル」をはじめ、4つの要素を活用した熱調整のさまざまな仕組みや方法が示され、シリーズ全体を俯瞰する内容となりました。

〔第3回〕気温:夏の屋根遮熱に断熱材はいらない

第3回(2020年11月19日開催)は、「気温:夏の屋根遮熱に断熱材はいらない」をテーマに、断熱材を使わずに空気を温めない方法についてお話しいただきました。
夏になると屋根面の熱は70度近くになり、室内気温を上げる大きな要素となります。これに対し、日本古来の「置き屋根」という工法を活用することで、現代住宅でも断熱材を使用せずに大きく気温を下げることが可能であることが、金田先生ご自身のこれまでの民家実測から明らかにされており、その構造や室内気温を下げる仕組みについて理解を深めました。
このほかにも、すだれ(外側ブラインド)や格子窓、植物など、現代でもよく見られる高断熱材を使わない方法の重要性が示され、自然と共にあろうとした古来の知恵を振り返り、現代に応用できる可能性を実例と共に学ぶ貴重な機会となりました。

まなびを広げるブックセッション

丸善雄松堂が主催する「知とまなびのイベント」では、各回の終わりにその日のイベントテーマに合わせて選書した本をブックセッションの形でご紹介しています。当社オリジナルの選書で、これまでに経験したことのない本との新たな出会いをお楽しみください。



「春夏冬のあるくらし 第1回」ブックセッションより





「春夏冬のあるくらし 第2回」ブックセッションより





「春夏冬のあるくらし 第3回」ブックセッションより


まなびの世界が楽しくなる「知とまなびのイベント」

丸善雄松堂では、年間を通して多彩なテーマで「知とまなびのイベント」を開催しています。これまで知らなかったことに「出会う」こと。その出会いが「もっと学びたい」という気持ちにつながること——皆さんの好きや興味、関心、好奇心などを喚起し、まなびの世界が楽しくなるようなひと時をお届けします。

■「知とまなびのイベント」 https://peatix.com/group/57084
1869年の創業以来「知とまなび」に寄り添い続ける丸善雄松堂株式会社が主催するイベント。リアル/オンラインに関わらず、幅広い世代が集う多様なまなびの機会の中で多様な価値観が出会い、新しい価値を生み出す場づくりを目指し、環境・コミュニケーション・働き方・芸術ほか多彩なテーマで通年開催。

執筆者

知とまなびのイベント事務局

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