2021年07月25日
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西洋諸国に追いつくために、学問や文化を必死になって紹介した丸善。明治前期に刊行した書籍のなかには変わり種もあった。
1878年刊行の『英米礼記』は、矢野文雄が記した西洋の作法書だ。挨拶、訪問、衣服、舞踏、冠婚葬祭、葬儀などにおけるマナーが二百一条もの項目にまとめられている。ヨーロッパ人と交際する機会が増えた当時、参考として使われたようだ。同時期には、尾崎行雄によって『公会演説法』『続公会演説法』も刊行された。西洋の演説を分解して、演繹法・帰納法といった話術の論理から、発声の仕方、細かな手足の位置の図解にいたるまで、こと細かに演説の仕方を手ほどきしている。さまざまな場面で公開演説が行なわれるようになった時代に、少なからぬ影響を与えたことだろう。
急速に変わりゆく時代のなかで、必要な情報を日本社会に届ける丸善は「文明開化の導火線」とも評された。
1878年(明治11年)