丸善雄松堂

連載

2021年08月22日

「サロン」化する本店二階 ~文化と人が出会う場所~

[CULTIVATE 13]

赤煉瓦の本社2階(洋書売場)

丸善の本店は明治期から文化人が集まる「サロン」でもあった。とりわけ、夏目漱石の『こころ』や芥川龍之介の『歯車』にも登場する「丸善の二階」。これは1910年に完成した、赤煉瓦造りの日本橋店二階洋書売場のことである。

日本鉄骨建築の先駆者・佐野利器によって設計されたモダンな建築の二階には、来客用の椅子やテーブルが置かれていた。そこに集う人は、大臣も作家も学生も、地位や身分の差別なく憩っていた。あの本この本と自由に鑑賞し批評できる、ささやかな知の空間だと喜ばれていたそうだ。

小説家の大佛次郎は「丸善の私」という寄稿文にこう書いている。「丸善に行った時だけ、ふと会って、やあと呼びかけ合う古い古い顔がある。お互いの軌道が違うから、よそで会うことは稀れなのに、不思議と丸善だと、ひょっこり出会う」。丸善は知を求める人々が顔を合わせる交流の場でもあった。

1910年(明治43年)

執筆者

まなびのつながり編集部

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