2021年10月17日
[INTRODUCE 21]
丸善が発行する日本初の企業PR誌『學鐙』は、二十世紀を迎えてまもない1902年に、早々と十九世紀を総括する企画を打ち出した。内田魯庵によるこの企画は、高橋是清や内村鑑三、徳富蘇峰なとさまざまな分野の知識人七十数名にアンケートをとって十九世紀の名著を紹介するもの。「アンケート」を活用した雑誌の企画は当時まだ珍しく、画期的なものだった。
アンケートの結果は、ダーウィンの『種源論(種の起源)』三十二票、ゲーテの『ファウスト』十六票、スペンサー『綜合哲学』十五票、ショーペンハウアー『意志と表象としての世界』十四票とつづいた。ダーウィンは著者別の投票でも圧倒的一位となった。発表後、丸善では『種源論』が瞬く間に売れた。版元のジョン・マレイ社は、何度輸出しても、この難しい本が売れ続けることに「日本という国はどんな国だ」と驚いたという。この企画は海外メディアの目をひき、『ロンドン・タイムズ』がアンケートの内容を紙面で紹介。「Maruya(丸善)」の名が海を越えて知られることになった。
1902年(明治35年)