2021年11月28日
[SUCCEED 27]
丸善は日本国内のみならず、国を超えて人々と知を共有するべく尽力してきた。そんな姿勢を象徴しているのが、1960年に確立した「Maruzen Asian Edition」と名づけられた日本を含むアジアの貧しい学生のための廉価版の洋書リプリントシリーズだ。
戦後日本の国民生活が貧しい時代、大学生は教科書を買うのもままならない状況だった。なかでも洋書は価格の高さゆえに、著作権を無視した粗悪な海賊版が流通しつつあった。そこで丸善は、1952年から原著作者の承認を得たうえで、原書のフィルムから洋書のリプリント版を製作・販売しはじめる。需要の高まりを受けその刊行数は増加していき、アジア諸国への輸出が決まったことでこのシリーズには「Maruzen Asian Edition」の名がつけられた。なかでも、教科書として定評のあるLange(ランゲ)社の医学書シリーズは、特に需要が高かったそうだ。知や文化をより多くの人に伝えたいという、創業時からの丸善の思いは、海を超えてアジアの国々にも届いていった。
1960年(昭和35年)