2021年12月12日
[DELIVER 29]
丸善は長年にわたり研究者や作家をはじめ、多くの人々と取引をしてきた。これは顧客の希望を叶えるため「選び、探し、届ける」ことに、従業員が熱意を注いできたからだ。丸善を支えてきたこの精神は、大正期の店員の日記からも窺える。
たとえば一橋商業高校(現・一橋大学)の学長・三浦新七から、講義用にポンペイの壁画に関する資料収集の依頼を受けた際は、あらゆる関連書籍をあたったうえに、神田の古書街を駆け回って、数少ない関連資料をかき集めるのに苦心した。また、第一次世界大戦中の1914年、浅草のドイツ人捕虜収容所から、収容中のドイツ人学者のための本の手配を頼まれた際は、独和辞典からドイツ語で書かれた日本の歴史、地理、物語まで、人力車の底が抜けそうになるほど本を集めて届けた。
全力で依頼に応える誠実さ、これは現在の学術情報ソリューション事業部はもちろん、教育・環境ソリューション事業部や、SSP(ショップ・システム・プロデュース)事業部、APS(アカデミック・プロセス・ソリューション)事業部にも受け継がれている、丸善の根底にある精神だ。
1914年(大正3年)