2022年02月27日
[INNOVATE 40]
1976年、丸善の企業PR誌『學鐙』に串田孫一のエッセイ「丸善の文具」が掲載された。串田は丸善の文房具売場を「こちらの気持が解放されているために、欲しいものが必ず見当たる」と評する。「それらを見て欲しいと思ったことは、同時に、それによって自分の仕事に新しい弾みを期待することであって、実際に仕事の能率が上がらなかったためしはない。口惜しいことではあるが、私は文房具に支配されていると告白しなければならない」。そう串田が絶賛するほとに、丸善の文具は作家のみならず多くの人々に愛され、人々の仕事を支えつづけてきた。
当時はいま以上に文房具が仕事の重要な道具だった時代である。持ち主の手にフィットし、仕事をするうえで心地よさをもたらす製品を提供することは、仕事環境にイノベーションを起こすことと同義だった。丸善にとって文房具の販売は、ただのリテールビジネスではなく、小さな道具から「知的環境を創造する」ことだったのだ。
1976年(昭和51年)