2022年03月13日
[MODELIZE 42]
スペシアルセールの告知はがき
年末になると、百貨店やデパートがこぞって乗り出す歳末セール。企業にとっては年末の在庫処理を目的としているが、丸善は歳末セールを率先して行なうことで消費者を盛り上げた。
昭和初頭の丸善では、洋品の在庫が問題となっていた。そこで在庫に最新の商品を混ぜて売り出すことで、顧客の購買意欲を高めようと考えたのだ。このアイデアは、当時洋品課の最年少である戸所道宣によるもの。1930年に「丸善洋品スペシアルセール」を初めて実施した。その後、洋品のセールは「ファミリーセール」という名称で発展的に形態を変えて実施されるよになった。販売商品の質の高さゆえ、なかには二十万円以上の買い物を現金で支払う人もいた。
顧客が競ってお金を使うセールは売上率が高く、いつしか丸善の経営を支える重要なイベントとなっていった。人々の購買意欲を高めるために行なうべきことの見極めはもちろん重要だが、若手社員の発案を素早く取り入れて実施し、自社にとっての一大イベントへと成長させたところに丸善の柔軟性が表れている。
1930年(昭和5年)