丸善雄松堂

連載

2022年03月20日

新社屋完成と不動産業の開始 ~戦後初の鉄骨鉄筋建築を賃貸活用~

[MODELIZE 43]

1952年に建てられた本社ビル

1952年、丸善は鉄筋コンクリートでできたモダンな新社屋を完成させた。それまでの日本橋の店は何度も火災に見舞われていたため、終戦以降に近代的な鉄筋を使ったビルを建てることは、当時の社長で丸善中興の祖である司忠にとっての悲願でもあった。戦災で希望を失った社員を前向きにさせるため、そして社内外に本社が盤石の体制であることを伝えるために、立派な社屋にしようという思いもそこにはあったのだろう。

しかし、丸善はこの「社屋」というプラットフォームからも新たな事業を生み出してしまったのだ。社屋が完成すると司は「本社を建てるなら貸しビル業も」と不動産事業を発案。こうして不動産事業に着手することで、丸善の経済は大きく変わることになった。当時、東京では戦後初の鉄骨鉄筋ビルだった本社ビル。そのうえ貸しビル業に着手した企業もほとんと登場していなかった。先見の明と柔軟性、そして「芋づる式」に事業を拡大していく発想力が、こうして新たな事業を生み出し、その後の一時代の丸善を支えたのだ。

1952年(昭和27年)

執筆者

まなびのつながり編集部

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