丸善雄松堂

事例紹介

地図文化の継承と振興を。コンセプトメイクから施設設計までトータルプロデュース

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株式会社ゼンリン

業種
美術館・博物館/企業
ニーズ

日本で初めて住宅地図のデータベース化に成功し、世界初のGPSカーナビゲーションの専用ソフトを開発するなど、地図業界最大手の株式会社ゼンリン。2018年の創業70周年をきっかけに、「日本の地図文化の継承と振興」という地図文化振興に一層力を入れています。そのパートナーとして、丸善雄松堂が施設設計からコンテンツ作り、さらには一連のアーカイブ化等を通し、企業ブランディング創生に協力した事例を紹介します。

70周年記念事業における取り組み

16〜19世紀に作られた西洋製の日本地図をはじめとする、極めて希少性の高い地図を数多く保有する株式会社ゼンリン。創業70周年を機に、地図文化の継承と振興の活動に力を入れたいとの希望でした。

カーナビやインターネットが普及した現代、キーワードを入力すれば、私たちはほんの数秒で行きたい場所の情報をチェックすることができます。インターネットと地図情報が結びついた今、私たちはその多くの恩恵を受けています。
しかし、どんなに地図の利用環境が変わったとしても、全国津々浦々の人々の暮らしを正確に俯瞰した地図情報を提供するというゼンリンの姿勢はずっと変わりません。長年にわたって地図に関わってきたゼンリンには、地図の価値を改めて伝えていきたいという思いがあったのです。

地図と本で媒体は違いますが、古くからある知的資産の良さを今の時代に見直し、そして後世に残していきたいことは、古書を長く扱っている当社としても同じ想いでした。

壮大なコンセプトを具現化するための取り組み

プロジェクト開始時に決まっていたのは、「日本の地図文化の継承と振興」というコンセプト、そして福岡県北九州市にある地図の資料館の改修という最終着地点。具体的にどの地図を展示したいのかなど、施設のイメージは明確になっていない状態でした。

そのため、より多くの方々に地図の価値を知ってもらうためにはどうすればいいか、ストーリーを考えることから開始。「日本の地図文化継承と振興」というコンセプトを具現化するために、次の2事業を柱にシナリオを描きました。

1. 地図の歴史的・文化的価値を見出し、地図そのものの価値を高める事業
ゼンリン保有コレクションの整備、目録情報に構築、社内専門人材育成の支援等により、地図そのものの価値を高めることを目指す。

2. ロイヤルユーザーや一般の方々が地図を捉えなおす機会や場を設け、地図(制作)の価値、意義、面白さを積極的に発信する事業
既存の情報発信活動をさらに発展させ、地図制作の歴史に触れ・学ぶための場や仕掛けを用意するとともに、後世への伝承活動を行う。

例えば、この一連のアーカイブ事業の一環として企画し、東京都渋谷区Bunkamuraで開催した『西洋人の描いた日本地図〜マルコ・ポーロからシーボルトへ〜』(2019年3月24日〜3月31日)。開催期間中は2,000名以上のお客様に来場いただき、連日賑わいを見せていました。

「素晴らしいもの見せていただきました」など、嬉しいお言葉をたくさんいただき、インターネットで簡単に地図を確認できる現代だからこそ、古地図の持つ重みが届いたのではないかと考えられます。

また、改修を終え、2020年6月にオープンしたゼンリンミュージアムでは、「世界と日本の歴史および、歴史を映し出す地図の紹介」のもと、展示内容を一新。「ゼンリン地図の資料館」に比べ展示面積と展示点数を大幅に拡大し、16〜19世紀に作られた西洋製の日本地図や、伊能図をはじめとする国内製の地図の変遷を歴史とともに紹介しています。

さまざまな領域でオンライン化が進む現代。そんな中、実物を目にしたり、手に取ったりすることでしか得られないものがあります。古い紙の質感や匂いから、歴史の風雪に耐えてきた地図や本の奥深さを味わえる空間です。時代背景や作者の思い、当時の人々の営みや世界観など、インターネットで得られる「情報」を超えたものを、きっと持ち帰っていただけるでしょう。

丸善雄松堂だからこそ実現できるトータルプロデュース

コンテンツ制作を含むデジタルアーカイブ、施設設計までトータルで携わらせていただいた本プロジェクト。美術館・博物館の設置や改修は、レプリカ制作を含む作品掲出・従事する職員のスキルアップ研修までを一気通貫で受託した一大プロジェクトとなりました。そのため、これまで積み重ねてきた長年の実績や信頼、グループ会社との連携など、当社の総力を結集して取り組むことに最大限注力しました。

施設、インフラ整備、コンテンツ作りと多角化した本プロジェクトで、それぞれが分断されることなく、質の高さを維持できたのは、当社のトータルプロデュース力の高さにあります。各フェーズにおいて外部の専門的知見を持つアライアンス先を確保し、質の高いアウトプットの創出を心掛けました。また、プロジェクトの進行管理については、ソフト(コンテンツプロバイド)面とハード(資料館改修)面でそれぞれ統括者を置き、両プロジェクトをプロジェクトマネージャーが俯瞰する体制とし、最終納期を見据えた進行管理を行いました。

そして何より、「丸善雄松堂さんになら、何でも任せられる」というゼンリン様の高い期待に応えられたのも、長年にわたって社会や企業の皆様との間に築いてきた信頼関係があったからこそだと思います。プロジェクト終了後、「予想以上に素晴らしかった」と、大変嬉しいお言葉をいただきました。

新たな社会に進みつつあるこのタイミングで実現した、古地図という古い知的資産を切り口にしたブランディング。本プロジェクトを通して、世の中に文化や歴史を広める役割を担えたことも、当社にとって大変意義のあることでした。

大学・公共・企業等各機関のブランディング創生事業の参考事例に

コンセプトメイクからコンテンツ、施設設計まで、アーカイブ関連事業を一気通貫して受託した本件。「一緒にストーリーから考えて、理想を言語化・具現化していく」オーダーメイド型のプロジェクトでした。
今後は、この経験をより多くのプロジェクトで活かしていき、今後全国的にもニーズが高まることが予想される「大学・公共・企業等各機関のブランディング創生事業」の展開を支援していきます。

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