伊藤 亜紗氏(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)
日時:2019.11/22(金) 18:45〜20:15
会場:日比谷図書文化館 B1F 大ホール
定員:200名(参加無料)
この世に一つとして同じ身体はありません。自分で選んだわけではなく、たまたま与えられた自分の身体。満足している人もいれば、とまどいを感じている人もいるでしょう。 身体が変われば、世界の見え方も変わります。高齢化社会とは、身体の多様性が拡大する時代でもあります。本講演では、目の見えない人の感じ方などを通して、ふだん当たり前だと思っているのとは違う仕方で、世界や身体をとらえてみたいと思います。
講演会レポート
物理的でない体の「輪郭」の本来的なゆらぎやすさや、健常な体と障害をもつ体との差異を踏まえ、他者の体やモノを取り込みながら動く、障害をもつ体におけるコミュニケーションの問題について、複数のケースを通してお話いただきました。
最後には、「多様性」「ダイバーシティ」という言葉の氾濫が、社会における分断の肯定に繋がる可能性への危惧とともに、多様性として、障害者に対して「何かをしてあげる」ではなく「共同してともに行う」と考えること、そして、障害者をラベリングするのではなく、その人の中にある多様性の一つとして尊重することが大切であるというメッセージが伝えられました。
参加者の声
テーマから難しい内容をイメージしていましたが、伊藤先生が柔らかい語り口で大変分かりやすくお話して下さり、楽しく学ぶことができました。「自分の身体が思い通りにならない人がいること」について改めて考えさせられました。目の見えない方に手拭いを使って柔道の試合を実況するなど、感覚の翻訳という新しい考え方に驚き感心しました。(50代)
「ダイバーシティ」「多様性」という言葉そのものが分断を生み始めているという観点に首肯しきりでした。地続きのわたしたち、ということに常に立ち返る必要性を再認識しました。(30代)
一人の人の中にも多様性があり、自分の体(と認識する事)の輪郭が揺らいだり安定しているときがあります。「自分の体が自分のものでないように感じたことは?」「他人のことなのに自分の体であるかのように感じたことは?」会場ではこのような共有があり、多様さを受け入れる他者や自分との関わり方のヒントをいただきました。(40代)
まなびのカード
当日ご参加のみなさまから、講演を聞いて考えたこと、感じたことをぎゅっと一言につめこんでいただきました。