大学や専門学校などの授業で使用する教科書を授業開始前の期間に販売する「教科書販売」においては、これまで学校様と学生様およびご家族の皆様が、より簡単に、より効率良く必要な教科書を購入・入手できることが最も重要でした。昨今、デジタル化の進展に伴い、電子教科書の活用が日常化し、デジタルとの融合によって学習のあり方や享受・受容の形が大きく変化しています。
これらの変化に対応するため、丸善雄松堂では、長年培ってきた教科書販売のノウハウに基づき開発した、教科書のWeb予約決済サービス「onSMaRT(オンスマート)」を起点に、デリバリーサービスや電子教科書、オリジナル教材制作をはじめとするさまざまなサービスをパッケージングした独自の教科書販売の提案によって、教科書・教材のデジタル環境の推進をご支援しています。
当社の教科書事業は、「EC」「物流」「電子教科書」「オリジナル教材」で構成したベストプラクティスを提供しており、これらの充実によって教育の質向上のために必要な基盤を実現することで、教育体制充実・基盤整備・積極的な質保証といった文部科学省の「専修学校振興策の骨太方針」の履行もサポートします。
教科書Web予約決済サービス「onSMaRT」
「これまでの実績やノウハウを活かして、大きな視点から教科書販売に新たな価値を提供したい」という想いから開発をスタートした「onSMaRT」は、とりわけ、教科書の販売方法の転換が重要でした。それまで定番だった学内の臨時特設会場での販売は、一見、簡単で便利なように見えるものの、学校様や学生様へのヒアリングを進める中で、「決まった時間でしか購入できない」「大量の教科書を持ち帰るのが大変」「大金を持ち歩くリスクがある」「学内で販売会場の確保が難しい」「教務系職員の手間がかかる」など、さまざまな課題や制約があることが分かりました。
そこで私たちは、教科書の予約・支払・受取までのプロセスを一気通貫型へと抜本的に見直して、学生様やそのご家族における教科書購入の利便性を向上させる一方で、教科書販売に関わる一連の業務の委託を可能にして学校様における業務効率化を実現することで、それぞれのステークホルダーが抱える課題の解決を目指しました。
そして完成した「onSMaRT」は、導入機関ごとに設ける専用のECサイトを入り口に、事前決済や配送・受け取りなどの利便性を整備した「教科書専用のWeb予約決裁サービス」として、2017年にサービスインしました。ローンチ以来、導入機関様にご評価いただいてきましたが、2020年初頭からのコロナ禍以降は急速に導入が進み、現在、全国300機関以上でご活用いただいています。(2021年8月時点)
さらに、運用の結果、「購入予約が22時以降の夜間に集中している」「学生様のご家族(実質的決済者)のクレジットカードでの支払比率が40%以上」などのデータが出ており、同サービスの利便性の裏付けや、当社が目指した課題解決の一例になっていると考えます。
■ ECサイトの活用で学習の基盤整備を補完
ECサイトによる教科書の事前決済の導入は、学生様やそのご家族へ多様な購入機会の提供や確実な入手機会を創出し、時間や距離などの制約を取り払う点で教育現場の基盤整備を補完します。そのため、全国300機関以上における「onSMaRT」の活用は、教科書販売の改革に留まらず、各機関における基盤整備への貢献につながっていると言えます。
■教科書専用の物流拠点を整備
当社では、物流業者との連携によって教科書専用の物流拠点を全国でご用意しています。現在、関東・関西・北海道・中国の7箇所にロジスティクス総合拠点を、全国11箇所に連携拠点を整備しており、今後、さらに拠点の拡大を進めます。
また、サービスの拡充としては、ECサイトonSMaRTと宅配会社との全国的な連携によりWeb上で販売から配送までを完結する「onSMaRT+Logiサービス」を導入して配送手続きを一層効率化し、お客様の利便性向上を図っています。
電子教科書やオリジナル教材との連携によるベストプラクティス
「onSMaRT」は「+Logiサービス」のほか、丸善雄松堂が提供する電子教科書「Maruzen eTextService」や「教材制作サービス」との連携によって更なるベストプラクティスを実現します。
文部科学省「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」における効果的な活用のあり方の一つとして、電子教科書・教材は今後一層推進されます。既に学校教育法などの一部改正や小中高のデジタル教科書の導入(GIGAスクール構想)がスタートし、電子教科書のネイティブ世代の高等教育機関への進学が目前に迫っています。こうした状況から新しい学修環境の整備が必要とされるだけでなく、2020年からのコロナ禍によって電子のニーズは急速に高まっています。
物理媒体の電子化は、書籍においてもごく身近なものとして普及してきました。昨今、二つの媒体のバランスは大きく変化し、いまや電子が紙媒体を超える勢いであり、今後、同様の変化が学術書・専門書である教科書においても急速に進むと想定しています。
■ 電子教科書の推進に向けて
当社では、教育・研究機関に所属する学生様や教職員の皆様向けの電子教科書サービス「Maruzen eTextService」を展開しており、高等教育機関において先駆的に取り組み、全国で幅広く導入を進めています。2021年には全国の大学・専門学校約90機関で導入いただき、今後もますます拡大する見込みです。また同年、電子教科書・教材のビューアーアプリ「ActLearn2(アクトラン2)」を一新し、お客様の声やニーズを反映した操作性の向上に加え、大学生協との共用の決定により高等教育機関におけるデファクトスタンダードとなりました。
「Maruzen eTextService」についてはこちら■ 教科書を補完するオリジナル教材の活用
教育現場では、教科書を補完する講義資料やオリジナル教材が数多く使用されますが、その制作過程では、著作権処理や編集作業、流通経路の確保をはじめ、さまざまな手間や個人でクリアすることが難しい課題があります。当社では、オリジナル教材制作の省力化と教材の品質向上を支援する「教材制作サービス」をご提供しています。紙・電子の媒体を問わず、教材制作の総合的な支援だけでなく、その後の出版・流通などサプライチェーンをサポートします。
「教材制作サービス」についてはこちら >
教科書事業を通して「知を鐙す」ために
我が国では、18歳までに使用する検定教科書は、必要最低限の知識・ルールを習得するための一種の手引きです。一方で、大学や専門学校などの高等教育機関で使用する教科書は、単なる手引きではなく、その先の、自らが問いを立て、答えを追求していくための入り口として位置づけられます。
学校様が教育ポリシーのもと、より良い人材に「そだてる」方針を定め、教職員の皆様が「そだて」を実践し、学生様が「まなび」を習得するというサイクルの中で、教科書にはその媒体に関わらず「そだてる・そだて」と「まなび」の本質があると私たちは考えます。昨今、デジタルとの融合によって、その本質的な価値を伝え、受け取る方法が新たに生まれており、それらをいかに提供し、活用していただくかを私たちは常に問い続けています。
その答えの一つが、「onSMaRT」および関連のサービスです。「onSMaRT」のロゴマークにあしらった赤い星は北極星であり、不動の星を道標として、学生様にまなびを通して輝く星を目指してほしいという願いを込めています。そして、私たち丸善雄松堂のミッションは「知を鐙す」。その実現のためには、まだまだチャレンジできることがあります。赤い星を教科書事業のシンボルとして、今後も一層、教科書を起点にした教育の質向上に必要な基盤のご提供に取り組んでまいります。