丸善雄松堂

事例紹介

まなびを通じた地域課題解決プログラム。「知のワーキング」を展開

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知のワーキング

業種
教育・研究機関/図書館/美術館・博物館/企業/官公庁
ニーズ

「知のワーキング」とは、これまで当社が培ってきた「150年の歴史(知のアーカイブ)」「大学ネットワーク(知の創造)」「地域に根差した図書館・店づくり(知を地域にひらく)」という3つの知見をもとに、学産官民(大学、企業、行政、商店街・市民)が連携した地域課題解決プラットフォームを指して言います。
では、「知のワーキング」とは具体的にどういうものか、実際にプログラムを実施した岡山、函館、青森の事例をご紹介します。

「知のワーキング」が生まれたきっかけ

当社が「まなび」を軸にした新規事業を検討している中で、「地域」の抱える課題解決に役立つプログラムを立案出来ないだろうかと考えたことをきっかけに、「知のワーキング」は誕生しました。これまで当社が培ってきたリソースを振り返る中で表出化した「3つの知見」を掛け合わせ、地域の課題の解決をまなびを通じて行う新しい試みです。

3つの知見とは

1.150年の歴史(知のアーカイブ)
 書籍をはじめとした知をアーカイブし整理する知見

2.大学ネットワーク(知の創造)
 知識人、大学教授などの人材リソースのネットワークと、知の創造プロセスに対する知見

3.地域に根差した図書館、店づくり(知を地域にひらく)
 創造、整理された知を最適なカタチで地域にひらく知見

を指します。北は北海道から南は沖縄まで全国には約800弱の大学がありますが、そのほとんどが当社のお客様になります。こうした全国にわたる大学のネットワークを持つことが当社の強みのひとつです。また、全国のさまざまな地域で書店や図書館の運営をしていることが、地域で新しい事業を展開することに役立つのではと考えました。

「知のワーキング」は、一般的に言う「プロダクトアウト型」ではなく、「マーケットイン型」のサービスです。地域ごとに異なる課題に対して、私たちの持つリソースを活かし、まなびを通じて、解決への道筋を探ります。

「産官学民」ではなく「学産官民」。大学中心の枠組みに

地域活性化は、日本の多くのまちが抱えている課題ですが、その解決のためにさまざまな取り組みが行われています。ただ、実際に行われている取り組みの多くは、単発ないしは補助金の支給などの単位で一過性のものになっていることが多く、「持続しない」「自走しない」という課題があります。また、関連する各組織間において、目指すものや熱量が必ずしも一定とならず、「本来の目的が追求されていない」「全員が一体となっていない」といった問題も頻発しています。
更に、「『産官学民』が連携して解決します」とよく耳にしますが、この枠組みの中で持続的、継続的に計画が着実に実行されている例は残念ながらあまり目にしません。
そこで「知のワーキング」では、当社が地域の主要なステークホルダーである学・産・官・民を、縦横に、そして、フラットにつなぐ「ハブ」となり、それぞれの立場、役割、利害関係、目的を調整し、持続的で自走可能な地域活性化を実現することを目指した活動を設計しました。そのために「産官学民」の順番を少し入れ替えて「学産官民」、つまり「大学」というアカデミックで中長期的な視野で物事を捉えることが出来る機関を中心に据えることで、公益性・公平性が高く、未来志向のビジョナリーなワーキングチームとしてまとめ上げていることを特徴として打ち出しています。

コンテンツの発掘・組み合わせなどを通じて、持続可能な地域活性化のためのプログラム運営を目指した活動を実施しています。

岡山市での商店街の活性化プロジェクト

「知のワーキング」の最初の事例は、2017年に岡山市で実施した「商店街の活性化」に関する取り組みでした。「シャッターをいかに開けるか」「人をどうやって集めるか」などさまざまな課題がありましたが、先人たちが行ってきている活動の中にこそ多くの知恵があると考え、課題解決のための手法のひとつとしてまずは彼らの実体験を聞いて掘り下げるイベントを実施。まちの課題解決を市民の方々の自分事にすることから取り掛かりました。自らの手で地域をより良くするために活動している実践者から「これまで取り組んできたこと」「そこから見えてきた課題と兆し」、「今後、取り組んでいきたいこと/プラン」などのお話を伺いながら参加者全員で「ひとりひとりが関われること」や「世代を超えて地域がよりよくなる方法」について考えていくことは新たな取り組みの第一歩として参加者からとても共感を得ることが出来ました。身近な隣人の想いと活動を共有し「自分でも一歩踏み出せるんだ」というきっかけが生まれたこのイベントは参加者同士の新たなつながりが生まれ、地域の取り組みではとても有効な手段のひとつであることを実感出来ました。

岡山でのイベント(会場風景)

また、このイベントに参加していた岡山市内のある大学から、ビジネスプランを企画立案する授業に関して、"『知のワーキング』の手法を使って新しい教育プログラムや、より実践的な内容を盛り込んだ授業は出来ないだろうか"との相談を受け、当社として大学の授業に伴走するプログラムの開発を行い、2019年度には実際に1年間、授業も担当させていただきました。学生たちは商店街の方々と一緒に実証実験をするなど、大学では得にくい実践知を積み、より質の高いまなびが実現出来てきています。一方、商店街や企業の方は、学生の「新しい視点」によって多くの気づきを感じ、継続的な活動や研究に期待も寄せています。


まちの課題解決に取り組んでいたところ、大学自体の課題解決にも関わらせていただくことに発展した岡山の事例です。

岡山でのイベント(対話ワークショップ)

岡山の大学での授業

大学の研究成果を、まちの困りごとの解決に

2018年には函館市でも商店街活性化のためのイベントを実施しました。イベントを計画、実行する過程で函館市内の8つの高等教育機関による共同体「キャンパス・コンソーシアム函館」の方々とご縁ができ、「大学の研究」で「地域の課題解決を目指す」ことを実現するための取り組みに関して協業させていただくことになりました。(これまで年に1回開催されてきた「合同研究発表会『HAKODATE アカデミックリンク』」に対話イベントを接続し、大学の先生・学生と企業や一般市民の方々とが対話を通じてアイディアをカタチにすることを目指した取り組みです。)

函館でのイベント(研究成果発表風景)

当社は、「キャンパス・コンソーシアム函館」と函館市内で活動する企業や活動団体の方々との間に立ち、それぞれの立場を調整するハブのような役割を果たしながら、これらの研究内容と現場の課題を結びつけ課題解決する方法を見出すことを目指しました。行政の方々も参加したこの対話イベントは学生にとっても企業、活動団体にとっても新たな気づきが数多くあり、高い評価をいただいています。

また函館での取り組みを行う中で、この活動に興味を持っていただいた青森市のコンソーシアムの方から連絡をいただき、函館市と同様、研究成果を実社会で活かすことを目指し、地元の人や企業の人たちと一緒に、グループワークを通じてアイデアを出し合いブラッシュアップする場を創り運営しました。

青森でのイベント(集合写真)

丸善雄松堂ならではのネットワークを最大限に活かした形で、地域活性化のエンジンを目指します

岡山、函館、青森と、形はその地域の抱える課題に応じてさまざまですが着実に広がりつつある「知のワーキング」による地域活性化のプロジェクト。今後も各地の当社の事業所を拠点に、さらに多くのまちで展開していきたいと考えています。

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